カルティエの宝石をプレゼントされて喜ばない女性は、おそらく世界に存在しないでしょう。ネックレスや指輪、時計などの宝飾品において、カルティエは世代を超えた不動の地位を占めています。自社のロゴを前面に出すブランドは多いですが、ブランド名をひけらかしていると取られてしまうこともあり、身につけているとどこか気まずくもあります。本当に良いものはブランド名ではなく、品質で勝負する――カルティエは、ブランドロゴの主張が他の一流ブランドに比べて控えめです。それでいて一目見ただけでカルティエだと分かる独特のデザインは、ブランド品をさり気なく身につける余裕と安心感を私達に教えてくれます。もちろんこれは、200年近くの歴史の中で技術とセンスを積み重ねてきたカルティエだからこそ、成せるワザでしょう。
カルティエの有名ラインナップには、どれも美しい物語が刻まれています。例えばカルティエを代表するリングである「トリニティリング」は、フランスの詩人ジャン・コクトーが愛する人にプレゼントするべく、「世界に2つと存在しないリングを作って欲しい」とルイ・カルティエに依頼したことから出来たリングです。3種類のゴールドが幾何学的に絡み合ったこの不思議なリングは、ピンクゴールドが愛、イエローゴールドが忠誠、ホワイトゴールドが友情をそれぞれ表しており、現在では「トリニティ」シリーズとしてお馴染みとなっています。「トリニティリング」同様に人気の高い「ラブリング」も、ビスで止めたモダンでシンプルなデザインが永遠の愛を表しており、リングのみならずブレスレットとしても好評を博しています。
リングのみならずネックレスでも、カルティエは他を圧倒しています。1粒ダイヤのネックレスでは、ティファニーの「バイヤザード」か、カルティエの「ディアマンレジェ」か、と言われるほどで、どちらも両ブランドを代表すると言っても過言ではないほどに美しいコレクションですが、ティファニーはどちらかと言えば年齢的な制限を感じるのに対し、カルティエは、そのブランドイメージや絶妙な価格帯、落ち着きのあるデザインから、どんな世代でも気負いを感じることなく身に付けることができます。また1粒ダイヤ系のネックレスの特徴として重ね掛けが出来るので、「ディアマンレジェ」をコアにして、さまざまな組み合わせを楽しむなどの遊び心も刺激してくれます。
カルティエは、宝飾品のみならず時計でも他の追随を許しません。確かにカルティエ以上の高級時計メーカーは沢山ありますが、彼らは実用性や正確性に重きを置くばかりで、デザインに革新性やエレガンスさがあるとは言えません。日常の中で非日常を演出するという思想のもと、カルティエはあくまでも宝飾品の1流ブランドならではの豪奢さと機能美の見事なバランスを時計に表現することにこだわり続けています。特に戦車をモデルとした「タンクウォッチ」は、男女問わずあくまでも上品に、そしてさり気なく「カルティエらしさ」を、カルティエにしては比較的お手軽な値段で身につけることが出来るため、様々な層からとても人気です。もう1つカルティエを代表する時計シリーズが「サントス」シリーズです。四角い幾何学フォルムにビス止めデザインという、カルティエならではの思想がこの時計には体現されています。時計のフレーム部分をビスの代わりにダイヤであしらったものは、その美しさに思わず目を奪われてしますほどです。
宝飾品や時計に比べるとあまりメジャーではありませんが、もちろんバッグもカルティエの人気商品の1つです。出産を経験したメスの牛からしか取ることの出来ないカウハイドレザーを惜しみなく用いた革で作られた、「マルチェロ・ドゥ・カルティエ」は、ハンドバッグとしてとても人気があります。ロゴが堂々と中央に据えられているという点ではカルティエらしくはないですが、不思議と全く嫌味を感じさせないあたり、エッジの効いたフォルムとロゴの絶妙な配置が、カルティエのデザイナーによって計算さ尽くされたものである証でしょう。