ボッテガ・ヴェネタといえばバッグ、バッグで一番のブランドといえばボッテガ・ヴェネタと断言してもおかしくはないほど、ボッテガ・ヴェネタのバッグは昔から男女問わず憧れの的となってきました。熟達した職人の技術と、デザイナーの生み出す斬新なデザインが融合することで生み出されるハイセンスなラインナップの数々は、他ブランドの追随を全く許しません。一職人の声を軽視してデザイナーに主導権を握らせてしまった結果、デザインばかりを重視して技術力の欠如したバッグが、一流ブランドにおいてすら散見されるなか、職人育成のための専門学校をボッテガ・ヴェネタが開いたことは、職人を尊重する同ブランドの決意が見て取れるといっても良いでしょう。「シルクの革」と呼ばれる、生まれたての羊からしか取れない極上のラムレザーを惜しみなく使い、素材の良さをそのまま最大限に活かすことのみを追求し続けたボッテガ・ヴェネタの思想が、どのラインナップにも体現されていると言えます。本当の意味でのラグジュアリー・ブランドだと言えるのではないでしょうか。
ボッテガ・ヴェネタを最も有名にしたデザイン、それは「イントレチャート」を除いてほかには無いでしょう。最上級のラムレザーやカーフレザーを職人の高度な技術をもって、格子状に編みこむことによって創られる独特のフォルムは、細部にまでこだわっていながらもシンプルさとスタイリッシュさを兼ね備えており、使っていて全く飽きることがありません。特にバッグでは、イントレチャートの真骨頂とも言える「ホーボー」が、ボッテガ・ヴェネタのクラフトマンシップと思想を体現しています。フォルムがとても美しい楕円形を描いている「ホーボー」は、「イントレチャート」の美しい編み込み格子とも相まって、遠くから一目みるだけでそれと分かるほどの存在感を放っています。言葉ではなかなか伝えるのが困難ですが、手に取った人は、こんなに柔らかいバッグが存在したのか、と衝撃を受けるほどの手触りです。ラグジュアリーの中のラグジュアリーと褒め称えられるだけあり、お値段もなかなか手が出せる価格帯ではないことは確かですが、金銭的に余裕が許せば、誰もが一度は手元に置きたいバッグです。
もう1つ、ボッテガ・ヴェネタを語るうえで外すことの出来ないバッグとして、「ナッパ」があります。「ホーボー」に比べるとフォルムにエッジが効いているわけではなく、トートバッグとして日常に溶け込むデザインではありますが、やはりボッテガ・ヴェネタの証である「イントレチャート」は見る者に、それがボッテガ・ヴェネタであることをすぐに知らしめてくれます。
「ナッパ」や「ホーボー」のみならず財布など、ボッテガ・ヴェネタのコレクションのほとんどに言えることですが、ボッテガ・ヴェネタは他のブランドと異なり、ロゴをデザインの一部として使ってはいません。ロゴが無ければどこのブランドだか分からないようなものが溢れている現代において、「イントレチャート」こそ、ボッテガ・ヴェエタの証でありそれ以上を語る必要はない、というシンプルな哲学には、このブランドの個性と自信がいかんなく溢れ出ています。
また、親元であるグッチがケリング社(旧ピノー・プランタン・ルドゥート)の傘下に入ってからは、ボッテガ・ヴェネタも時計や服、香水などといった小物を手掛けるようになりました。これについては賛否両論がありますが、バッグや財布だけでなく、ボッテガ・ヴェネタ流のライフスタイルを総合的に我々へ提供しようという試みは、エルメスやシャネルといったような、自らの思想を体現しようとする歴史ある一流ブランドの仲間入りを、真の意味で果たした証拠であるのではないでしょうか。